日本では未だほとんど知られていないシドルハニーというハチミツ。イスラム諸国では高級高価な蜂蜜として珍重されています。ナツメ属のシドルの木から採れる濃厚な味わいの蜂蜜は古の時代から人々の健康の維持に役立ってきました。きっとあなたの生命にも活力を与えてくれることでしょう。
 　
　シドルハニーはアラビア半島南端に位置するイエメンと、パキスタン北部乾燥エリアが主な産地のとても稀少な蜂蜜です。水分量１２．５％にまで熟成された褐色の色合いの蜂蜜は独特の香りと意外にクセのない強い甘さを感じ、その甘さはスッと消えていきます。
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　パキスタンで採れるシドルハニーは全て野生のシドルの木に蜂が作った巣を取るかもしくは木に設置した巣箱から採取されます。他の蜂蜜に比べ高価なシドルハニーはパキスタン国内ではほとんど消費されず、その多くはイエメンやサウジアラビアに輸出され、そこで詰め替えられ自国産として売られているようです※。なぜなら、アラブ、イスラム諸国で特別な意味を持つシドルハニーは両国でとりわけ人気が高いものの、生産量が少ないため（それはシドルの木が乾燥地帯に植生するため木の数が少なく、またその花は小さく、蜜を集めるハチも小さいため、結果採れるはちみつの量が少なくなってしまう）国産では需要を満たせないからです。近年は人気の上昇にともない価格が上がり、その上天候による生産量の不安定さも手伝って価格が高騰することもあるため、経済力のある中東産油国富裕層の愛用品となっています。
       
アブダビ（UAEの首都)の蜂蜜店Bees Kingdomではイエメンシドルハニーが１�s1,500Dhs（約40,000円）で売られていますが人気商品です。　イエメン国内でもシドルハニーは１Kgあたり160〜180ドルで売られています。
　※イエメン、サウジアラビアは全蜂蜜消費量の８０％を輸入に頼っており、パキスタンも大きな供給元の一つとなっています。サウジアラビアでは蜂蜜はメッカ巡礼のお土産品として非常に人気があります。 

シドルの木
 

　右の写真はサウジアラビアの谷間に自生するシドルです。熱帯地方の容赦なく照りつける太陽の熱と突然の鉄砲水にも耐える強靱な幹を備えています。

　Sidra-tul Muntaha   
　天の一番高きところにシドルの木あり。
　コーランによればシドル(Sidr)は楽園に生える木の一つで、アダムはこの実を食べたため地上に落とされたとされています。また、キリストが磔（はりつけ）にされたときの冠はこの木の枝で作られたと考えられ、別名キリストいばらとも呼ばれています。
　
　シドル(Sidr)は一年に数日しか雨が降らないような乾燥した土地に深く根を張って自生し、少ない雨で多くの実りを人々に与えてくれます。根、樹皮、幹、葉、花蜜、果実の全てが食物、木工材料、燃料などに利用されます。　シドル(Sidr)は品種により背の低いタイプと高いタイプがあり共に鋭い棘（直立とフック状のペア）があります。低いタイプは動物避けに垣根などにも利用されています。

 

　シドル(Sidr)はクロウメモドキ科ナツメ属の木で日本のナツメの木と同属です。（デーツとして知られるヤシ科のナツメヤシとは違います。） ナツメの実は大棗（たいそう）、サネブトナツメ（ナツメの原種）の種は酸棗仁（さんそうにん）として日本薬局方にあるように、日本でも古来ナツメを健康の維持に利用してきました。アラブ、イスラム諸国でもシドル(Sidr)はコーランの中の記述にあるように特別な植物として認知されており、葉から根まで古くから利用されてきました（葉はシャンプーとして、樹脂オイルはデオドラント、木の灰は毒蛇に噛まれたときに、果実は高栄養価の食物、根や樹皮は滋養にと)。シドル(Sidr)の花から採れる蜂蜜は漢方に使われる棗と同様に美容と健康維持に役立つ、黒蜜のような味わいが魅力的なミネラル豊富な蜂蜜です。

ビタミン・ミネラル（２０１３年輸入分の数値）
ナトリウム ４mg/100g   リン ４mg/100g 　鉄 0.2mg/100g 　カルシウム 6mg/100g 　
カリウム 313mg/100g  マグネシウム  4mg/100g   銅 0.01mg/100g 　
亜鉛 0.1mg/100g　 マンガン 0.03mg/100g　ホウ素 1.9mg/100g   
総ビタミンC 10mg/100g    ビタミンB12 0.1μg/100g   ナイアシン 0.1mg/100g

遊離アミノ酸（２０１３年輸入分の数値）     
アスパラギン酸 １mg/100g　グルタミン酸 ２mg/100g　プロリン ３８mg/100g